日本相続学会の第4回研究大会が11/18に開催されました。このことについて,もっと早く書きたかったのですが,事後対応や報告書などがありまして遅くなりました。今回の研究大会のテーマは「被相続人の責任」です。当たり前とおっしゃる方もあると思いますが,「相続の土台」という部分まで含めた被相続人の責任を対象にしています。被相続人に対して厳しい指摘をしていますが,突き詰めていくとこの辺りに辿り着きます。以下は,研究大会の大会プログラムに掲載された私のあいさつ文の一部です。拙い文章ですがご披露します。

相続開始後、相続人達がその手続きや納税に右往左往した挙句、相続争いに発展することは被相続人が望んでいたことではない。被相続人が相続人の幸福を願うのであれば、被相続人の責任で相続の準備をしておくべきである。という提言を本年1月にいただくことが出来ました。

では、遺言・生命保険・民事信託等に加え、もし相続税予納制度あれば自動的に「円満かつ円滑な相続」となるのでしょうか。被相続人によって相続の準備が行われていても、準備の方法や内容が正しくなかった場合や、理由なく相続人間の公平を欠いていれば相続人や社会から支持を得られません。また被相続人の家族への愛情を相続人が理解し、感謝することが出来なければ「円満かつ円滑な相続」にはたどり着きません。

まさに「相続の土台」が必要です。それは、生きていくための知恵や技術を学ぶ機会を、被相続人から得ることと共に、被相続人が相続人の前でどのように生きて、他人を思いやる気持ちを伝えたかという、積年の結果によるものではないでしょうか。しかし、被相続人に完璧な結果を求めるばかりではなく、許容する力も必要です。そしてこの許容力も、他人を思いやる気持ちのなかで醸成される機会を得るのではないでしょうか。

今回の研究大会では、「被相続人の責任」とは何かという課題を通して、「円満かつ円滑な相続」をさらに追究したいと思います。
一般社団法人日本相続学会