ご存知のように相続の場面で,死亡保険金は民法上も税法上も優遇されています。そのため相続の相談をお受けしていると,生命保険の話題になることも多いです。

「遺言書,生前贈与,生命保険」は,相続対策の王道だと思います。しかしウチは関係ないとか,まだ早いとか言い訳ばかりで,きちんと出来ている人は,ほんの一握りしかないのが実態ですね。

もう間に合わなくなってから,慌てて依頼があるのも,「遺言書,生前贈与,生命保険」です。認知状態では遺言書は作れません。生前贈与をしようにも時間がありません。もちろん入院中に生命保険は入れません。仮に何かができたとしても怪しいですね,まして冷静で正常な判断によるとは考え難いですね。

さて,保険嫌いの話しに戻しますが,生命保険の話しになると,多くの皆さんが「若い時からずっと掛金を払ってきたが,60歳(65歳)の時に殆ど返って来なかった。1000万以上払ってきた。最後は月に4万円も払っていた。騙された。下取りするって何だったんだ。詐欺だ。」少々エキサイトしながら,だいたいこういう発言をされます。

証券を見なくても,おそらく高倍率の定期保険特約付き終身保険で,更新型だったことが予想されます。この体験をさせられてしまった団塊の世代とその前後の人達は,改めて相続対策で生命保険という選択肢に積極的になれません。それはどこの会社がという話ではなく,生命保険会社全体に対する不信感が,ベースにしっかりと敷かれているという感じです。

保険会社の見解を聞けば,そういう保険に入っていたのは自分の責任だし,契約だから仕方ないでしょ。約款に決められた通り保障してきました。払込完了時に今後の選択肢についてもご説明し,ご承諾のサインもいただいております。というような話になることも容易に想像出来ますね。

保険会社が,高倍率の定期保険特約付き終身保険で如何に稼いだかという話は,たくさんの方が解説していますので割愛しますが,ずっと前に東京駅近くに本社がある生命保険会社を訪問した時,従業員用エレベーターにエレベーターガールがいたのは,びっくりしました。(その後廃止されたそうです)

保険商品を正確に説明したり,誤解を招かない説明資料を使ったりすれば良かったと思います。そうしなかったツケが表面化するのは,20年も30年もずっと先の払込完了の時です。当時の関係者はたくさん売ったことを手柄にして殆ど退職しているでしょうが,契約者であった団塊の世代の皆さんの払込完了は,近年に集中していたと考えられます。

保険会社は,一時的にたくさん稼げたかもしれませんが,保険嫌いの国民をたくさん作ってしまったのでしょう。飛んでいる時間の長いブーメランになったと思いますが,それ以上に国民生活に影響を与えたのではないかと思いますね。