●研究部会パネルディスカッション「民法改正について」

パネラー
○大杉麻美氏 明海大学不動産学部教授 ○森川紀代氏 森川法律事務所弁護士 ○五井泰彦氏 プルデンシャル生命保険㈱ ○平川 茂氏 平川会計パートナーズ税理士
コーディネーター: ○吉田修平氏 吉田修平法律事務所弁護士

(吉田)本年1月より法務省において相続法制検討ワーキングチームが設置され,議論が行われている。その内容は多岐にわたるが,本日のパネルDSCN2015ディスカッションでは,①配偶者の貢献に応じた遺産の分割を実現するための措置 ②遺留分制度の見直しという2つのテーマのみを取り上げます。
①(森川)今年亡くなったある俳優の死亡当日の入籍によって、妻となった女性には,1/2の相続分がある。今回の配偶者の貢献度を考慮するというのは、実質的公平性、妥当性を目指す上で画期的な第一歩である。しかし貢献に応じた分割となれば、もう一段階、紛争のステージを作ることになる。「相続争い」を避けるために,また当事者の予測可能性を上げるためには,できる限り客観的な基準を用いるべき。婚姻期間,同居期間などから形式的に算定するほかないのでは。
①(五井)長男のお嫁さんなどには予め生命保険金の受取人になってもらい,感謝の気持ちを示しておく事が可能。生命保険はお金に名前を付けることができる手段です。死亡保険金の受取人になれる人:被保険者の配偶者または二親等以内の血族・二親等以内の姻族で経済的な結びつきがある場合は追加書類提出・三親等以上の親族の場合は追加書類提出と契約確認。他
・受取人になれない人:友人・知人・恩人・単なる同居人(特に同性)
②(大杉)現行の遺留分制度は複雑になってしまい円滑な相続を妨げている。さらに新たな制度の創設は難しいのではないだろうか、効力などの見直しをすれば新たな解釈の可能性を発生させることになるのではないだろうか。とはいえ,効力の見直しを行い家庭裁判所が介入することになれば柔軟な対応が可能となるだろうか。本来の遺留分制度の制度趣旨を踏まえ,また,現在の相続の状況も加味したうえで改正の方向性を探る必要があるだろう。
②(平川)遺留分制度の見直しについて,中小企業経営承継円滑化法が制定された際に,民法特例が創設されたことは画期的であった。しかし経産省への届け出やその後の条件が厳しく,年間届出件数は少ない。使い勝手が悪いので条件緩和が求められる。
(吉田)お話しのあった民法特例の創設に関わったが,まだ十分とは言えないので今後の展開に期待したい。また配偶者の貢献という点では,離婚協議の際に採用する財産分与の方法を,相続に流用出来ないか検討を進めるべきではないか。また実務者から見ると,①・②ともに信託と保険が解決の糸口と予想される。今後の議論を注視するとともに本学会の意見をまとめたい。