5月21日,新しい特別講座「遺言能力・遺留分・寄与分」を開講しました。講師は,竹内裕詞弁護士。判例を解説しながらお話しいただきました。
相続争いのなかで,遺言書の有効性について問題になることがあります。その内容が一部の相続人にのみ有利になっている。被相続人が高齢になってから書いた遺言書で,書いた時期には,既に認知症になっていたのではないか?等が発端の場合が多いようです。自筆証書遺言の場合,その筆跡が本人のものであるか,強制によって書かされたのではないかが,よく論点になります。
一方,公正証書遺言の場合は大丈夫かというと,そうでもなく,公証人は正当な理由がなければ公正証書作成の依頼を断ることができない。と公証人法によって定められています。公証人が遺言作成の際に遺言者と面談し,明らかに認知症などの場合は法律行為が出来ず,「遺言能力なし」として遺言の作成を拒否しますが,認知症かどうか判別がつかないようなグレーな場合に,微妙だからという理由で断れず,遺言を作成せざるを得ない場合もあり得ます。
そのため「公正証書遺言」でても、遺言能力がなかったとして無効とする裁判例も多く存在しています。 公正証書遺言の場合,公証人がその内容に責任を持つのではなく,その存在に責任を持つという理解ということですね。駆け込みの遺言書は,後でトラブルを招くこともあります。早く,余裕のある精神状態の時によく考えて作成することが大切ですね。相続争いの論点の代表選手「遺言能力・遺留分・寄与分」に絞り,解説いただいた今回の講座は,かなり良かったと思っています。
公証人法(明治四十一年四月十四日法律第五十三号)第三条「公証人ハ正当ノ理由アルニ非サレハ嘱託ヲ拒ムコトヲ得ス」