非嫡出子の法定相続分について,実子と同じとするという,最高裁決定があったのが平成25年秋でした。その後すぐに民法改正が行われたのですが,その時に相続法の見直しについて与党内で議論があり,早速,法務省で「相続法制検討ワーキングチーム」が構成され,平成26年1月から1年間の議論が行われました。ほぼ同時に与党では「家族の絆を守る特命委員会」が発足。こちらの議論は,あまり表に出てこないのでよく分かりませんが,税制に関連する話題もあったみたいです。「相続法制検討ワーキングチーム」は平成27年1月に1年間の議論を報告書にまとめました。その時の報告書の骨子は下記のとおりです。

★相続法制検討ワーキングチーム報告書
○被相続人の配偶者の居住権を法律上保護するための措置
○配偶者の貢献に応じた遺産の分割等を実現するための措置
○寄与分制度の見直し
○遺留分制度の見直し
○その他の検討事項
1 遺産分割における可分債権の取扱いについて
2 遺産分割において相続人以外の者の貢献を考慮する方策

そして法務大臣から諮問第100号「高齢化社会の進展や家族の在り方に関する国民意識の変化等の社会情勢に鑑み,配偶者の死亡により残された他方配偶者の生活への配慮等の観点から,相続に関する規律を見直す必要があると思われるので,その要綱を示されたい。」を調査審議するために法制審議会民法(相続関係)部会が設置されました。これまでのワーキングチームは法務省内の検討会でしたので,格上げされて人数も増え,平成27年4月に議論がスタートしました。ほぼ毎月の議論の後,平成28年夏に中間試案をまとめ,パブコメ募集。パブコメの結果は,配偶者の法定相続分はもう増やさなくても良いなど,部会の想いと少し違いました。部会はさらに議論を続け,平成29年夏に追加試案を発表し,改めてパブコメを募集しました。そして平成30年1月に要綱案をまとめました。要綱案の骨子は下記のとおりです。

★民法(相続関係)等の改正に関する要綱案
第1 配偶者の居住権を保護するための方策
第2 遺産分割に関する見直し等
第3 遺言制度に関する見直し
第4 遺留分制度に関する見直し
第5 相続の効力等(権利及び義務の承継等)に関する見直し
第6 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

そして現在開会中の第196国会に提案される予定です。(3月上旬予定)相続法制は,昭和55年(1980年)に配偶者の法定相続分の引上げ,寄与分制度の導入等の改正がなされて以来,大きな見直しはされてきませんでしたが,今回は国民生活の実態に合わせて大幅な改正が予定されています。
ご縁があって,ワーキングチームの議論からずっと追っかけてきましたので,法律を改正するということは大変なことで,すごく慎重にたくさんの議論が重ねられていることがよく分かりました。
ちなみに1980年の平均寿命は,男性73.35歳 女性78.76歳。2016年の平均寿命は,男性80.98歳 女性87.14歳。たった36年間で男性7.63年,女性8.38年も伸びています。今度は民法改正の内容について書きたいと思います。