11/17.18に,東京で日本相続学会の第5回研究大会がありました。今年のテーマは「社会構造の変容と相続」です。実行委員長の提案ですが,「変化」ではなく「変容」という言葉を持ってくるところが面白いですよね。・「変化」:時間が経てば自然に変わっていくこと。(Change)・「変容」:時間とは関係なく起こる。瞬時に起こることもある質的変化(Transfer)ということだそうです。深いでしょ。

基調講演は,中央大学理学部の寺本剛准教授に「世代間倫理」というテーマでお話しいただきました。理学部に哲学の先生?と思われるかもしれませんが,そうなんです。
(講演前の先生のコメント)
科学技術の発展により私たち人間は、自然を改変する大きな力を獲得し、そのおかげで豊かな生活を享受している。しかしその一方で、グロ-バルな気候変動や増え続ける高レベル放射性廃棄物の問題が示すように、手にした強大な力をうまく制御できず、遠い未来にまでリスクや不利益をもたらしかねない状況に陥ってもいる。
この現実を受けて、1970年代ごろから、現在世代が死んだ後に生まれてくる新しい世代への配慮を求める世代間倫理の考え方が、科学技術時代に求められる新しい倫理として注目を集めてきた。そこでは相互的な関係の成り立たない遠い未来世代との関係をモデルとして未来世代に対する倫理のあるべき姿について検討が続けられてきている。
もっとも、世代間倫理の考察を遠い未来世代との関係だけに限定する必要はない。子や孫といった近い未来世代との関係を前提とする相続の問題も世代間の重要な問題であり、それについて世代間倫理の観点から考察する可能性は開かれている。そこで本講演ではこの可能性を追求し、相続の問題を世代間倫理の観点から考えてみたい。

(お話しの中でのKeyWord集)
・哲学は特定領域をもたない。特定ではないので何を扱ってもよい。フリーハンド。
・哲学は、少し何かを入れて考えやすくする補助線のようなもの。
・高レベル放射性廃棄物は、地球全体に逃げ場がないから未来に逃げている。
・未来の人達に対する倫理
・「勝ち逃げ」は違う。「負け送り」である。
・私達の生きている間には結果は見えない。
・何世代も先の未来の人は、過去の人に何も出来ない。相互関係がない。
・過去から恩をもらったら、未来に恩を送らなければならない。「恩送り」
・社会の為にある世代を超えた公共財だから、ズルをしてはいけない。
・相続は、現世代と未来世代が同じ時間を共有する。直接対話することが出来る。
・対話が出来るのにしないで相続争いをするのは違う。
・最少単位の公共である家族の重要性。
・長いスパンで物の見方や発想を拡げること。