先日,日本相続学会のオープンセミナーがありました。前半は「ライフプランニングファイルの構築」として酒井利直先生にお話しいただきました。7月11日の特別公開講座でお越しいただきます。予想を超える内容です。お楽しみにどうぞ。
後半は,廣田尚久弁護士の「和解という知恵」という講演でした。これまで,相続が争いにならないよう事前に準備することを考えてきましたが,今回は既に相続が発生し,争いが始まった時,どうやって和解をしていくかという視点です。相続争いが起きた時,ある人に相談するとその人の個性や経験,言い換えると人徳というようなものが解決に誘うという現象を見聞きします。私なりの理解ですが,これを個人のパーソナリティではなく,理論的に構成してシステム(仕様書)として世に送り出そうというイメージです。
日本相続学会も「相続学」という新しい学問領域を創ろうとしていますが,それはきちんと文字にして理論的構成をすることの大切さを訴えています。そういう点で,廣田先生の 「紛争解決学」という考え方やアプローチの仕方をとても興味深く勉強させていただきました。もちろん紛争解決学という学問領域を構築されたのは廣田先生です。廣田先生の志に強く共感することが出来,新しい出会いに感謝いたします。
相続財産は民法上の財産だけを指すのではない,訴訟は100対ゼロの勝ち負けで出口が一つだけ,和解は各々の権利に対する解決であり,多様な出口がある。私は今回初めて「反復囚人のジレンマ」を勉強しました。また「一見偶然と思われるような事象にヒントがある」という共時性の原則。「最終提案仲裁」という仕組み等々。まだうまく説明できませんが,とにかくドキドキの講演でした。
和解という知恵 (講談社現代新書) 廣田尚久著