木の上で片手で逆立ちして,鼓をたたいています。

10月になると毎年のように秋祭りの話題を書いていますが,今年はちょっと遅れました。今回は急に人形師をすることになり,直前1週間の特訓がありました。からくり人形が,木の上で逆立ちして,一周回ってそのまま鼓をたたくという曲芸を,1日に何回もする訳ですから結構大変。実は,一体の人形の下で3人の大人が絡んでいます。見物する人は毎年見ている人が多く,正しい人形の動きをよく知っていますので,失敗するとしばらく話題にされます。そんな緊張の一瞬が続きましたが,人形師の皆さんのチームワークで無事完了!

さて,昨年の暮れ,日本の「山・鉾・屋台行事」33件が,ユネスコの無形文化遺産として登録されました。ユネスコの世界遺産には,姫路城や白川郷などの「世界文化遺産」,屋久島や小笠原諸島などの「世界自然遺産」があります。これらは「有形」の世界遺産とされ,今回の「山・鉾・屋台行事」は無形文化遺産として登録されました。(わが町内の秋祭りは対象外でしたが,同じ市の大きな祭りは登録されました。おかげで今年は観客が多かったそうです。)

山・鉾・屋台行事とは,祭りを指すことはご存知のとおりです。山・鉾・屋台などの対象物ではなく,祭りを楽しみ,祭りを後世に伝え続ける人達の行為に稀有な価値があり,無形文化遺産として登録されたということだと思います。「行事」という,良いところに視点がありますね。

何世代も前から地域で守られ続けてきた山・鉾・屋台は,人々にとって大事な財産です。どこの地域でも大切に,宝物のように保存しています。しかし山・鉾・屋台だけでは祭りは出せません。何か月も前から準備をする人,飾り付けをする人,担ぐ人,修復する人など,人々が多くの役割を担い,次世代に祭りを伝承しようとする人々の情熱こそが,無形文化遺産です。

祭りは,全ての参加者が「自分が主役」の気持ちで参加するところが面白いところです。東日本大震災の後,被災地の祭りを復活させようと,努力した人々のことがよく話題になります。そこでは神輿(みこし)が津波に流されていても,祭りを再興することが出来ました。

相続に置き換えると,①まずは親から身体と生命を相続しているという事実に感謝しなければなりません。そして ②受けた教育や習慣,価値観などの財産評価の対象にしない無形の相続財産と,③相続税の財産評価をする有形の相続財産があります。何れも大切な相続財産ですが,順序としては①②③の順に置くことによって自然に並ぶと思います。相続も無形相続財産のことを忘れなければ,かなり争いが減ると思っています。